わりと人生が詰んだひきこもりの備忘録

さとう学。20年ものひきこもりから抜け出したのに勤めた会社はブラックでした。パワハラで再びひきこもりに。社会を変えようと市議選に立候補。ひきこもり新聞、ひきポスに記事を寄稿。

自分が選挙に立候補した経緯ー後編

 

(17)土日夜間議会にしようという団体があるのを知った。2015年にそれを公約に掲げて千代田区議会選挙で三人が立候補した。みんな落選。しかし、旧民主党や維新の党を上回る票を得た。三人立候補したのは三人の議員がいないと議案を提出しないからだったが、一人にしぼれば受かっていた。

この土日夜間議会に賛同する者は多くいて、堺屋太一や宮内義彦、竹中平蔵、ひろゆきなど。市議会の平均会期日数は約85日ていど。ヨーロッパ・アメリカなどでは地方議員はボランティアベースということを知った。

そして、日本の地方議員の議案提出率はデータの年度にもよるが11%以下。首長(市長や区長など)の議案の99.1%が原案どおりに通過。自ら議案を出すこともしなければ、首長の監視役としても役に立っていない。地方議員の存在意義とは?

 

(18)パオロ・マッツァリーノ(謎の覆面作家)が自身のブログで議員報酬を合法的に返還する方法を紹介していた。これを応用すれば、自分が議員になったときに合法的に自分の議員報酬をひきこもり支援などの財源にできると思った。

土日夜間を訴えて(市議会議員の仕事なんてたった85日と市民にアピールしつつ)、自分の議員報酬の半分を公約(ひきこもりや精神障害者雇用義務化に向けた支援)の財源にすることをアピールすれば勝てると思った。

ただ、体調が悪いのと選挙に出るための書類手続きが膨大で駅頭などで選挙前に有権者にアピールすることができなかった。また、公職選挙法が難しくて身動きが取れなかった。

駅頭で「議員の仕事はたった85日。それで入間市の議員は700万ももらえちゃうんです!」とずっと訴えれば現役世代の無党派層に興味を持ってもらえたんだが。

※駅頭で訴えるにはまず県に政治団体の登録申請をしなければならない。そして、選挙前は「選挙」や「立候補」という言葉は使えない。また、名前のタスキは使用できない。

 

(19)日本に3万5千人いると言われる地方議員を敵に回すのが面白くなってきた。もし、自分が議員に当選して議員報酬の財源化をすればおそらく日本で初めて。他の地方議員にめちゃくちゃプレッシャーを与えられるし、地方議会史を自分が塗り替えることができる。これほど愉快なことはない。

(20)「土日夜間議会改革」と連絡を取れず。HPに現役議員や立候補予定者の相談を受けつけをしていますと書かれてあったんだが。

(21)姉から自分の名前を出さないでくれと言われる。父は選挙に乗り気だったがあれこれ口を出し始める。自分の友人・知人を家に呼んで寿司でも取ろうと言うので「いや、それ連座制でオレが逮捕されるから」と言ってもバレなきゃいいとかそういう態度だったので一切選挙から手を引いてくれと伝えた。だから、家族の応援はゼロ。

 

(21)放送大学で知り合った人にカメラマンやヘアスタイリストを紹介してもらう。

(22)ひきこもり関係で知り合った人に選挙活動を手伝ってもらうことになった。特に選挙カーを運転できる人がいたのは助かった。

「選挙カーでうるさいやつには投票しない」という人がいるが、結論から言うと選挙カーで名前を連呼したほうがその候補者の得票率が高くなるというデータがある。

これはもっともな話で選挙に関心がない人は選挙カーで連呼した候補者をそのとき初めて知るわけで、選挙カーがなければ全く知らず投票先にもならない。また、選挙カーのうるさい候補者だと思っても次の選挙のときはその候補者のことなんておぼえていない。

知られてなんぼ。一番怖いのは無関心。ちなみに僕のことを知っている人は僕の選挙カーを心待ちにしていたことをあとで知った。自分に関わりある候補者の選挙カーに対してはうるさいどころか非常に好意的。

 

(23)ひきこもり新聞の木村編集長の選挙のときに一緒にポスター貼りを手伝ってくれたM君が骨折で離脱。これは大きかった。彼は車の運転をできるのでポスター貼りと選挙カーの運転の両方をお願いしようと思っていたから。

(24)立候補するための書類が膨大。公選法を調べるために何度も選挙管理委員会に電話した。あとで気がついたけどあまりにも厳格に守りすぎた。選挙活動中にしか自分が立候補することが言えないとあるんだけど、そんなことを言うとボランティアさんなど頼めない。公選法を気にしすぎて人を集めきれなかった。

 

(25)選挙の書類を一人でこなす。他の議員のブログを見ると後援会の人と処理すると書いてある。一人だと本当にきつい。自分は書類関係が苦手なので特に。それ以外にも選挙カー業者、印刷会社、ガソリンスタンドなどのやり取りも一人でこなす。きつい。

自分でHPも作り、その上にボランティアさんの日程調整もするので選挙前から何度も寝込んでいた。選挙公報もほとんど自分で作り上げるが最後の仕上げでどうにもならない(ひきこもり友だちが何とかしてくれた)。

 

(26)選挙ポスターがぎりぎりで出来上がる。何とか間に合った。でも、カメラマンさんがイメージするカラーと実際印刷されたポスターのカラーが若干ちがった。もう時間がないのであきらめる。

(27)選挙が始まる。前日は一睡もできず。初日は、11名が手伝ってくれた。8名がひきこもり関係(当事者、支援者)。1名が自治会で知り合った方。2名がひきこもりボランティアさんが声をかけてくれた人。しかし、ポスターを一日で貼り終えることができなかった。

翌日、ダウン。一日中休む。選挙カーで他の方が回ってくれたがポスターも貼ってくれた。ただ、手伝ってくれる方が大幅に減る。そのあとも一日中活動することは無理だった。せいぜい5、6時間。体が動かない。

選挙中、苦情や問い合わせの電話も来て自分一人で処理。最終日は丸一日がんばれた。最終日はひきこもりの友人が二人来てくれた。

 

(28)投票日。夜、一人で開票速報をラジオで聴いた。票が伸びない。落選が決まった。朝起きたら当選おめでとうというメールが入った。慌ててネットで調べたらやはり落選。どうやら一部のメディアで誤報があったらしい。

 

選挙が終わっての感想。みんな議員って何でもできると思っている人が多いなんだなと思った。市議なんて権限ないのに。議員だから期待値は高い。その反動で何かあるとサンドバッグにする。いや、自分も以前はそうだった。

権力者だから仕方がないとは言え、度が過ぎているところもある。今の議員に不満があるからといって、自分が議員になろうとはしない。

自分がなれなくても自分の仲間から立候補者を擁立させることはできるだろうに。やはりみんな責任を取りたくないだけなんじゃないだろうか。

 

雨宮処凛だと思ったけど政治家に目指さないかという質問に対して「自分は有権者の奴隷になりたくない」と答えていた。気持ちはすごく分かる。デモに参加したり評論家のほうが断然楽だから。

自分が立候補していろいろ議員に対する見方が変わったような気がする。これは収穫だった。また、政治とは関係なく他のことでも誰かがやってくれるのを待つではなく、自らが道を切り開こうという気持ちにも少しはなれたかもしれない。