わりと人生が詰んだひきこもりの備忘録

さとう学。20年ものひきこもりから抜け出したのに勤めた会社はブラックでした。パワハラで再びひきこもりに。社会を変えようと市議選に立候補。ひきこもり新聞、ひきポスに記事を寄稿。

あるひきこもりに「お前はフェイクだ」だと言われたことがある

今度、保健所でひきこもり公開講座があってそれに出る。とは言っても、中心になるのは大学の先生の講演。

 

当事者の体験発表というのがあるんだけどその持ち時間は25分ほど。しかも、その当事者は4人も出る。1人当たりの時間を考えるとサッカーのロスタイムと同じくらい。オレにパワープレイしろと?

 

ひきこもったきっかけと動き始めたきっかけを話すみたいだが、これは簡単だ。でも、こういうのってさ、聞き手の望むようなストーリーを話したくなるんだ。いかんいかん。

 

きっかけといえば、村上春樹が小説を書くきっかけがかっこいい。神宮球場でヤクルト・広島戦を観戦していたときに先頭打者がヒットして村上春樹は小説を書こうと決意した。

 

自分も人目を避けて夜に散歩をしていたときに流れ星を見てひきこもりから抜けだそうと思ったとかそういうきれいなエピソードが欲しい。だが、そんなものはこの世界には存在しない。

 

この公開講座は主に行政の関係者が聴きに来るらしいのでホッとしている。親をふくむ当事者相手だと気を遣って疲れてしまう。

 

自分はこうやってひきこもりから抜け出せましたと言うと、「うちの子は無理。あなたは特別」と親御さんの反応があるし、「あいつは偽物だ」と当事者には憎悪の念を向けられるし良いことなんて一つもない。

 

昔、ケータイを持っていたのをひきこもり当事者会で一緒だった人に散々責められた。「ひきこもりなのにケータイを持っているなんておかしい!」と。その彼は1年後ケータイを持った。

 

他には自助会でピクニックに出掛けたときにデジカメを持っていたら、「デジカメを持っているのはおかしい」。しまいには俺の腕時計を見て「何でそんな高そうな時計をつけているんだ」と怒られた。最後にはこのヒキセレブとも言われた。

 

もうボロぞうきんのような格好をするしかねえのかよ……。そんな彼は今では車を買って運転しているらしい。

 

よく元ヤンキーが「昔はやんちゃしました」と言っているのに対し、そのやんちゃのせいで人生を狂わされた人がいるんだぞと怒る人は多いと思う。

 

実は、そのひきこもり版もある。ガチヒキのやつが元当事者にあの偽ひきがとかあいつフェイクだろと散々叩いておいて自分が抜け出したら「あのときはつらかったですね……」と悲壮な顔をして語る。

 

おい、オレはお前の無差別マシンガンの流れ弾に当たって蜂の巣になっていたが耐えていたんだぞ。

もっとも、オレは魂のステージが高いので若干イラッとしながらも何も言わずにただ微笑むのみ。やっぱオレ、偉いわ。